オーダースーツの生地について!
実際スーツを仕立てる上で外せない構成要素は・・・
・オーダーの種類(パターンオーダー・イージーオーダー・フルオーダー)
・生地
・縫製
・オプション(遊び心)
上記の4点がオーダースーツを仕立てる上での醍醐味や、大きな仕立てのポイントになってきます。
そこで、ここまで、オーダーの種類についてご紹介をいて参りましたので、ここからは、よりデザインにも直結してくる生地についてを紹介していきます。
ウール(WOOL)について
羊の毛を指し、動物繊維の一種になります。羊毛を用いた糸や織った布もウールと呼ばれています。
一般的には羊の毛を指しておりますが、広義ではアンゴラ・アルパカ・ラクダの毛も含まれるということもあり、高級生地ブランドにはアルパカの素材も多く活用されています。
また、高級生地ブランドのメッカとして知られているビエラ地方は特に良質な服地素材で有名な地域でイタリアファッションを支配しており、ウール製品に使われる糸と生地の半分以上は、ビエラ地方で作られているとも言われています。
SUPERの表記について
SUPER | ミクロン |
SUPER 80’s | 19.5ミクロン |
SUPER 90’s | 19.0ミクロン |
SUPER 100’s | 18.5ミクロン |
SUPER 110’s | 18.0ミクロン |
SUPER 120’s | 17.5ミクロン |
SUPER 130’s | 17.0ミクロン |
SUPER 140’s | 16.5ミクロン |
SUPER 150’s | 16.0ミクロン |
SUPER 160’s | 15.5ミクロン |
SUPER 170’s | 15.0ミクロン |
SUPER 180’s | 14.5ミクロン |
SUPER 190’s | 14.0ミクロン |
SUPER 200’s | 13.5ミクロン |
SUPER 210’s | 13.0ミクロン |
SUPERの数値が上がると原料が細くなっていき、原料である繊維の細さを表しています。
SUPERの表記はウールだけで用いられ、コットンやリネンはSUPER表記をしないのが特徴です。
生地の『SUPER』という表記は、概ねSUPER 80’Sから、10刻みでSUPER 90’S、SUPER 100’S、SUPER 90’S、SUPER 110’Sと大きくなっていきます。
一方、糸そのものの細さは『番手』で表し、48番手、52番手、56番手、60番手、72番手、80番手、120番手、と数値が増えていきます。
番手は恒重式(こうじゅうしき)と呼ばれ、重量1,000gの綿を何メートルまで伸ばせる細さかが基準になっており、例えば120番手なら、1,000gの綿を120,000m伸ばせる細さになると解釈されます。
生地に記載のタグの見分け方について
スーツにはどんなブランドの生地が使われているのか、そんな情報がひと目でわかるのが、スーツの袖部分や裏地についている『生地ブランドのタグ』になります。
タグにはその生地のモデル名、素材、生産国、そして製作した生地ブランドの情報が詰まっています。
読み方は非常に簡単なので、スーツを購入する際には、こちらを参考に、生地のタグを必ずチェックしておくこと便利かと思います。
生地の選び方について
生地を見分けるためには、経験も必要になってきますが、まずは生地に触ったときにハリやコシがあるかを確かめます。
そして生地をクシャっと握った時にシワ感がしっかり戻ってくることを確認する点が重要になります。
ウール100%の素材は、ウールそのものが有する特徴として、復元力が高いという特性を有するため、シワが戻りやすいと言われています。
そのため、出張等でお出かけされた際でも、一晩ハンガーで逆さ吊りして頂くと細かなシワは直ぐに元に戻ります。
このような生地を確認の上、使用することにより、実際にスーツを仕立てた際に、仕立て映えします。
縫製について
ここまで、オーダースーツの大まかな種類や生地について、ご紹介をして参りましたので、ここからは縫製について
1)ハンドメイドの縫製について
2)マシンメイドの縫製について
を紐解いてご紹介して参ります。
ハンドメイド
手縫いを指しており、ハンドメイドによる糸にかける力の加減はマシンで再現し難い職人技になります。
この運針による力の加減で服を着続けると、人間の身体に徐々に馴染んできます。
ミシンは生地を縫い合わせる際に、通常上糸と下糸を使用しますが、ハンドメイドの場合上糸下糸は無く、布の上から下まで一本の糸を使用し縫っていくため、ハンドメイドの方が、縫い目が若干リラックスしており、柔らかい風合いを生みます。
マシンメイド
マシンメイドは一般的にはミシンの使用を指します。
マシンを使うと言っても、操作する人間には熟練の技術を必要とします。
実際に仕立て上がってくるスーツやジャケット、スラックスのクオリティは非常に高いです。
マシンメイドであることのメリットは、高級紳士服ブランドでも扱われる生地を比較的安価で使用できます。
上糸下糸を使用しても、生地そのものの風合いを崩すことはありません。
また、マシンメイドといっても、1から10まですべて全自動の機械で作るわけではなく、基本的な縫製はミシンで行い、部分的にミシンで作業できない箇所を手縫い(襟ぐりや肩など)で行う製法です。
スーツのシルエットやモデルについて!
イタリアン・スタイル
■女性にモテたいイタリア人
イタリアスーツの特徴的な点は、柔らかな仕立てである点です。
ソフトテーラリングのシルエットが美しく、華やかな雰囲気を感じさせます。スーツの起源である、重厚感あるかっちりとしたブリティッシュスタイルのスーツとは異なり、軽やかなナチュラルスタイルがイタリアスーツの大きな特徴です。
イタリア人の社交的で楽観的な国民性が現れています。
イタリアの素材が柔らかく軽い仕上がりなのは、乾燥している気候で生地のヘタリが遅いためです。
イタリアはミラノとナポリなど北と南で多少異なりますが、常に異性を意識し陽気に人生を楽しむという考え方を持っています。スーツを作業着として考えるのではなく、ファッションを意識したスタイルとして生まれたと言えます。
- 【仕立て】パット、毛芯共に薄く軽さやソフト感を重視している
- 【肩と袖山】肩から自然につながる様なナチュラルショルダーが特徴
- 【Vゾーンとウエストシェイプ】Vゾーンが深めでセクシーさを表現、イギリスに比べるとシェイプ位置は低め
- 【素材】素材は軽く柔らかくドレープ感のある物が多い
ブリティッシュ・スタイル
礼節を重んじるイギリス人一番の特徴は、ジャケットのシルエットで重要なパッドがしっかり入り、張りのあるショルダーラインです。
堂々としたブリティッシュスタイルの象徴的なディテールになります。その他にも打ち込みのしっかりとした固めの生地で仕立てるハードテイラリングや固い馬の毛を使った毛芯の使用など、丈夫なスーツ作りが基本的なスタイルです。
またイギリスの素材が重くて固いのは湿度が高い気候でもすぐヨレヨレにならない為であり、スーツが重くてカッチリしているのも耐久性を重視している点とイギリス人の考え方や国民性の表れだと言われています。
- 【仕立て】パット、毛芯共に厚くしっかり入っていて重量感がある
- 【肩と袖山】袖山を盛り上げた構築的なショルダーラインが特徴
- 【Vゾーンとウエストシェイプ】Vゾーンが浅くカッチリとした仕立て感を強調、ウエストシェイプ位置は高め
- 【素材】素材は打ち込みが入っていて重量感のある物が多い
製造に関して!ミルとマーチャントの違いを紹介!
一般的にスーツの生地ブランドは大きく分けて『ミル』と『マーチャント』の2種類に分けられています。
それぞれの、工程の違いや生業の違いなどについても紹介していきます。
価格感や、供給先のブランドの違いもご理解頂けると思うので、是非ご確認下さい!
ミルについて
織物工場で服地の生産業者のことをミルと呼ばれています。家族経営が中心の古くから続く織物工場で自社ブランドで営業しています。
規模の大きい所は、原毛の買い付けから、紡績、服地の生産を独自で行い、直接世界に発信しています。
代表的ブランドはロロピアーナ、エルメネジルド・ゼニア、テーラー・ロッジなどがあります。
ミルの魅力は独自で開発した生地に対するこだわりと愛着を持っています。
そして、中間マージンがない分、マーチャントと同等の生地と比べて若干割安感があります。
ミルの多くは、自然豊かで良質の水が流れている川の近くで操業しています。
イギリスはロンドンから北へ250㌔のコルネ川とホルム川の合流点のハダースフィルドに工場を構えています。
イタリアはミラノから北西150㌔のスイスの国境近くの都市ビエラにゼニアやロロピアナなど大手のラニフィーチョをあります。
ちなみに日本は愛知県一宮市、濃尾平野木曽川の近くに日本の毛織物工場の70%がそんざいしています。
おなじみの御幸毛織、長大毛織、の本毛織など多く点在しています。
マーチャントについて
織物商社で織物工場と契約を結び流通を担っています。
また、織物工場を傘下に納め、羊毛を買い付け、各々のミルの特徴に合わせてプロデュースして生地を織らせています。
商社であるため、世界中から様々な生地を集めることが可能です。
消費者のニーズをいち早く取り入れトレンドな商品を提供出来、バリエーションも広く豊かです。
産業革命後、大英帝国の貿易拡大戦略などで広く世界に進出しました。
スキャバル、ドーメル、ホーランド・シェリーなどが代表的なマーチャントです。
※最近では、マーチャントでありながら自社工場(ミル)を持ち、ミルでもマーチャントのような業務形態をおこなっているため、その区別は曖昧になっており、そのどちらを選んでいただいても実質的は遜色はありません。
まとめ
今回はオーダースーツの全貌について、概略を幅広く紹介して参りましたが、如何だったでしょうか?
昨今、比較的手頃にオーダースーツが入手可能になってきた背景と合わせて、ファッションのみに留まらず、社会的な『オーダー思考』も相まって、人気沸騰中のオーダースーツですが、ご紹介の通り、世界中のセレブに愛用されている、ハイブランドスーツと、物理的な差異がない点もご理解頂けたかと思います。
是非この機会に、あなただけに合う極上なスーツをお仕立てし、益々のビジネスのご活躍及びご発展にお役立て頂けたらと思います。